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事例紹介

(事例2)小6のNさんの例

「漢字を書けず、学校不信、不登校だった子がデザイン科に進学、目標は芸大」

Nさんは、字をきれいに書くことができず、そのことを学校でいつも注意されることが大きなストレスになっていました。 まじめで努力家な性格で、がんばってがんばって何度も書いて練習するのですが、その努力が報われることはなく、きれいに書けないという結果だけを見て、直すように言われるばかりだったそうです。
次第に、先生に対する不信感も募るようになり、不登校が続くようになったNさんを見かねたお母さまが、インターネットで当校を見つけてアセスメントに来られました。

まず、アセスメント(面談)では強い書字障害が見られました。
Nさんは集中してがんばって書いてくれるのですが、文字として成り立っていないぐらいに崩れてしまうのです。
大きさもバランスがとれません。ゆっくり書かせても同じでした。

書字障害(ディスレクシアとも)をはじめとするLD(学習障害)は、その多くが遺伝子の変異による生まれつきの特徴だと考えられていますが、症状や有効なトレーニングは一様ではありません。
それに加えて心理的な要因も大きく影響するために、その子にあったトレーニングを見つけることがまず大切なことです。

Nさんの場合は、デッサンの授業で優れたデッサン力を見せたことから、見た通りに鉛筆を動かす能力はむしろ優れているように見受けられました。しかし、文字を文字として認知する部分に難しさがあるために、文字を書けないタイプだったのです。
視力に問題がないにも関わらず、字が重なって見えたり、ゆがんで見えたりする症状に対応するためには、まずどのような環境環境であれば文字が認識しやすいのかを探し出します。紙の色を変えたり、字の色を変えたり、罫線やマスの大きさを変えたり、字間を開けたり、ホワイトボードやタブレットを使ってみたり、いろいろと試して、ベストな条件を見つけ出しました。
次に、字というものを視覚以外の感覚を使って認知するために、立体物の文字を指先で触ってどの字か当てるゲーム、背中に指で書かれた字を前の人の背中に同じようになぞるゲーム、それが何の字か当てるゲーム、身体全体を使って空中に大きな字を書くトレーニングなどを行いました。

始めたころは「私はがんばってもどうせ無理」といった態度でしたが、実際に向上する自分の字を見て、徐々に自信を持てるようになりました。

字を書くことが嫌で不登校になっていた子でしたが、、卒業するころにはノートを取ることが好きになっていました。

その後、彼女は、デザイナーになるという夢を抱いて、デザイン科のある高校に進学しました。現在は、京都芸術大学で学ぶことを目標にがんばっているそうです。

昨今、発達障害という言葉は広く知られるようになってきましたが、コミュニケーション障害、集中できない、暴れるといった偏ったイメージが先行し、特に学習障害に対する理解と支援は、学校においてさえもまだ浸透していないように思います。

専門的な知識と技術が求められる特別支援においては、個々の教員の努力だけではなかなか難しいところもあり、熱心な、あるいは思いやりのある教員ほど、力になろうとして練習させてしまい、かえって子どもたちを追い詰めてしまうことがあると聞いています。

文部科学省の迅速な対応を願う一方で、 TEAM GIFTED では、三者面談に同席して学習障害について説明させていただいたり、教員の勉強会に講師を派遣するといった活動も行っています。